Thinking Women

Written by Shashank Lele in 1994-5 Translated by Yoshida Mitsuko

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Location: 京都市, 京都府, Japan

December 18, 2006

第1章(4)

範子は、リサと私がデリーに旅立つ時、ボルプール駅まで見送りに来た。リサは口止めしたけれど汽車を待っている間、私は範子にその件について質問しないではいられなかった。

「幸せがほしいのよ。深くて純粋な幸せが」

インドで何を求めているのかを聞くと、範子はそう答えた。

このシャンティニケタンでの6ケ月間にいろんな国籍の人間に接した。その大半はごく限られた英語しか話せなかった。だから、こんなクサイ言葉にもなんとか我慢できるようになっていた。

「ドラッグかなにか試してみれば?」

私は軽率に言ってしまった。範子はちょっとショックを受けたようで、私をのぞきこんで目に冗談の跡があるかどうか見極めようとした。それがないのを見て、真剣になって言った。

「本当にドラッグを試すことを勧めるの。もし一度もしたことのない経験ができるというのなら試してみても構わないけど」

プラットホームはひどく暑くて、急に我慢が出来なくなった。

「範子さん、深くて純粋な幸せって一体何なんだ。《涅槃》がおいてあるデパートの住所を教えろって言うのか? そんなものがこの世にないってことが分からないほど愚かなのか。幸せ、幸せと大声で叫んでいる間はそれがどんな意味を持っているのか決して分からないよ。できることならもう少し肩の力を抜くことを学ぶんだね。ごく普通にある物に目を向けるようにしてみるんだ、例えば木とか、微笑んでいる子供とか、わからないけど、ロッショマライ(ベンガルのミルク菓子)の味とかそんなもの。幸福なんてものは来るにまかせるんだよ。いつも走り回ってばかりいないで」

範子は私の苛立ちなど少しも気づかずに言った。

「わかっているわ。リラックスが必要だということは。肯定的に考える必要があるってことも。じゃあリラックスする方法を教えてちょうだい。ヨガ、瞑想、あらゆるものを試してみたけど今だにリラックスすることができないの」

範子が、散歩に連れて行ってもらうのを待っている時の私達の犬とそっくりだと気付いた時、私は彼女に危うく消え失せろと言うところだった。ああ何という瞬間。気付いてみたら全く奇妙な状況に置かれていたのだ。リサを捜すと、プラットホームの端で雑誌を買っているところだった。範子をもう一度見た。全く同じ表情で辛抱強く待っていた。突然、彼女は泳ぐのが好きなのだということを思い出した。運河で泳いでいるのを一度ならず見た事がある。

「範子さん、正しく座禅を組むこと出来る?」

「ええ、ええ、できるわ」

「水の上でしたことある?」

「水の上で?」

「そう。明日泳ぎに言ったら、水の表面で試してみたら。沈まないようにしてまるで地面の上に座るように水の上に座禅を組むようにしてみることだ。強い集中力と身体の統合が必要だ。1ケ月後に出来るようになったら、たいしたものだね。一度出来るようになったら、少しずつリラックス出来るようになる。百パーセントとは言わないが保証は出来る」

「本当にどうもどうもありがとう。決してこのアドバイスを忘れません。早速今日の夕方から練習を始めて、あなたがデリーから戻って来た時には見せてあげられると思うわ」

この会話の内容を、汽車が発車するとすぐリサに話した。リサは愉快そうに笑って、即座にいい思いつきができたことを賞めてくれた。

「とにかく、あまり心配しなくていいわ。年上で賢明そうな人とみると、誰かれ構わずこの種の質問をして相手を困らすんだから。一種のパフォーマンスね」

しかし私は、何かしっくりしないものを振り落とすことが出来ないでいた。

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