第2章(2)
「彼女、彼と寝たわよ」
1週間後のことだった。私は英雄気どりで、それみろと言うのを我慢した。
「いやな笑いはやめて。何か言いなさいよ」
「何て言ってほしい? とにかく、それ誰が言ったんだい」
「範子自身よ。あなたが今朝郵便局に行ってた時、来たのよ。彼女、とても罪の意識を感じているの。自殺したいって言ってた」
「どうして? 処女でないことを婚約者が発見するとでも言うのかい」
「ちがう、ちがう、そういうことじゃないのよ。もう彼女そういう経験はあるの。だいたいは婚約者とだと思うけど。それにしてもヤバイことじゃない? 1月に結婚しないといけないのに、ここで知らない男と寝てるなんて」
「ねえ、リサ、あのベンガル少年が先週範子と一緒にいるのを見た時、この方向に進んでいるのははっきりしてたよ」
「そうね、今思えばね。だけどどうしたらいいの? 困ったことになっちゃった」
「どうしたらいいって、どういうことなんだ? なぜ君が何かしなければいけないんだ? 君に責任はないんだから」
「そこが問題なの。そのことに多少責任を感じるのよ」
「この問題をちょっと深く考えすぎているようだと思うけどね。どんな風に責任を感じるのか説明してみろよ」
「あなたに理解できるかどうか分からないけど、私がある種の手本を示したようなのよ。そうじゃない?」
「君には故郷に誰か結婚の約束をした人がいるわけじゃないだろう?」
「そういう意味じゃないのよ。私が言っているのは、幸せになる方法をある意味で示したということなの。幸せになるために人が誰にも相談しないで決断をすることは、別に悪いことではないということを」
「リサ、何かわけの分からないことを言ってるよ。なんで、そんなことに手本が必要なんだ?」
「日本人には要るのよ」
「ああ、またそれか。このことでそんなに哲学的になる必要はないと思うけどね。この娘は8~10週間彼氏と離れて暮らしている。寝るチャンスがあったからやっったのさ。そんなことは家を離れていれば当たり前だよ」
「お願い、そんな露骨に言わないで。もう何百回と言ったけど、普通の女の人は単純な肉欲っていうのはあまり持てないの。一緒に寝ることを考える前に別のことがいっぱい必要なの。特に厳しく育てられた範子はそうなのよ。セックスを楽しめなくて、婚約者が求める時だけするんだってよく言ってた」
「そうか、君とセックスについて話すのか?」
「そうなの。それが、罪を感じるもうひとつの理由なの」
「何だよそれは?」
「最初ここに来た時、私ちょっとおかしくなってて、タントリズムとかそういうものに興味を持っていたことは知っているでしょう」
「セックスを通して悟りを得るってやつか」
「そう、でもラジニーシとかそういう今流行の類いじゃなくて、何かもっと原始的な類いのもの」
「それで?」
「そういうことをよく範子と話してたの。彼女、私を師匠か何かのように扱った。その頃私はあなたに出会った。だから範子が無意識のうちに私の足跡を一歩たがわずたどろうとしているという感じがあるの」
「うーん、君の言うことはありうるかもしれないけど、気を楽にしろよ。そうじゃないかもしれないからね」
「そう言ってくれてありがとう、私もそうじゃないことを願うけど」
1週間後のことだった。私は英雄気どりで、それみろと言うのを我慢した。
「いやな笑いはやめて。何か言いなさいよ」
「何て言ってほしい? とにかく、それ誰が言ったんだい」
「範子自身よ。あなたが今朝郵便局に行ってた時、来たのよ。彼女、とても罪の意識を感じているの。自殺したいって言ってた」
「どうして? 処女でないことを婚約者が発見するとでも言うのかい」
「ちがう、ちがう、そういうことじゃないのよ。もう彼女そういう経験はあるの。だいたいは婚約者とだと思うけど。それにしてもヤバイことじゃない? 1月に結婚しないといけないのに、ここで知らない男と寝てるなんて」
「ねえ、リサ、あのベンガル少年が先週範子と一緒にいるのを見た時、この方向に進んでいるのははっきりしてたよ」
「そうね、今思えばね。だけどどうしたらいいの? 困ったことになっちゃった」
「どうしたらいいって、どういうことなんだ? なぜ君が何かしなければいけないんだ? 君に責任はないんだから」
「そこが問題なの。そのことに多少責任を感じるのよ」
「この問題をちょっと深く考えすぎているようだと思うけどね。どんな風に責任を感じるのか説明してみろよ」
「あなたに理解できるかどうか分からないけど、私がある種の手本を示したようなのよ。そうじゃない?」
「君には故郷に誰か結婚の約束をした人がいるわけじゃないだろう?」
「そういう意味じゃないのよ。私が言っているのは、幸せになる方法をある意味で示したということなの。幸せになるために人が誰にも相談しないで決断をすることは、別に悪いことではないということを」
「リサ、何かわけの分からないことを言ってるよ。なんで、そんなことに手本が必要なんだ?」
「日本人には要るのよ」
「ああ、またそれか。このことでそんなに哲学的になる必要はないと思うけどね。この娘は8~10週間彼氏と離れて暮らしている。寝るチャンスがあったからやっったのさ。そんなことは家を離れていれば当たり前だよ」
「お願い、そんな露骨に言わないで。もう何百回と言ったけど、普通の女の人は単純な肉欲っていうのはあまり持てないの。一緒に寝ることを考える前に別のことがいっぱい必要なの。特に厳しく育てられた範子はそうなのよ。セックスを楽しめなくて、婚約者が求める時だけするんだってよく言ってた」
「そうか、君とセックスについて話すのか?」
「そうなの。それが、罪を感じるもうひとつの理由なの」
「何だよそれは?」
「最初ここに来た時、私ちょっとおかしくなってて、タントリズムとかそういうものに興味を持っていたことは知っているでしょう」
「セックスを通して悟りを得るってやつか」
「そう、でもラジニーシとかそういう今流行の類いじゃなくて、何かもっと原始的な類いのもの」
「それで?」
「そういうことをよく範子と話してたの。彼女、私を師匠か何かのように扱った。その頃私はあなたに出会った。だから範子が無意識のうちに私の足跡を一歩たがわずたどろうとしているという感じがあるの」
「うーん、君の言うことはありうるかもしれないけど、気を楽にしろよ。そうじゃないかもしれないからね」
「そう言ってくれてありがとう、私もそうじゃないことを願うけど」
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