Thinking Women

Written by Shashank Lele in 1994-5 Translated by Yoshida Mitsuko

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Location: 京都市, 京都府, Japan

January 12, 2007

第2章(3)

翌朝スサントは私に、範子・プリヨ事件の詳細を話してくれた。運河から少し離れた所に大きなホテルがあり、カルカッタの金持ち達が、シャンティニケタンで週末を過ごしたり、お祭りに参加したりする時に滞在する。プリヨムケルジーは22才の若者で、そのホテルでウエーター兼アシスタントマネジャーとして働いている。この若者プリヨは野心家で、「いい人生」を送りたいと思っている。海外に行って金を稼ぐとか。そこで、願望を成し遂げる方向づけに日本語を習うことに決めた。

スサントは時々意地悪くなる。彼は、プリヨが日本語を役立てる気なんかなく、ただその時シャンティニケタンに住んでいた10人の独り身で、ちょっと風変わりな日本人女性のうちの誰かと友達になる言い訳にしているだけだと思っていた。私はスサントに、私も最近まで若くて綺麗なベンガル娘から中国語を習っていたことに気付かせた。それはともかく、何人もいる日本人学生のうち、山瀬範子ただ1人がプリヨに日本語を教えることを買って出たようだった。

日本語の授業はロマンチックな場所で行われた。だけど、これも彼らの落ち度とは言えない。この祝福された場所で、ロマンチックでない場所を見付けようとするのは難しい。だから、池の近くの木の下や昔風の茶屋、そして範子の部屋などで勉強した。

そうこうするうち、ある夕方、山瀬範子がプリヨ・ムケルジーにキスしたとスサントは言った。現場には居合わせなかったが確かだと言う。何故その順序なのか? だってそうなんだからと譲らない。とにかくその点にこだわる理由は、何かベンガル人の誇りに関係があるのだろうと私は思った。

次に何が起こるのだろう、とスサントに尋ねてみた。

「別に。何も。世界中が知っているように日本人はとても実際的だ。プリヨは夢を夢見るのに忙しい、うぶなベンガルの若者なんだ。ゆくゆくこの女は他の者たち同様去って行くだろう。そして、時がたてば日本から年賀状さえ来なくなるだろう」
 
スサントは賢者のようなふりをしているが、そうではない。彼もプリヨ同様、外国人に積極的に関わって、独自に何かしようとしているのを私は知っている。畜生! この呪われた場所にいる馬鹿者は皆が皆、恋に落ちているらしい。タゴールの魂のなせる技に相違ない。

1 Comments:

Blogger 白蝶 said...

注:
タゴールとは、非白人として初めてノーベル文学賞を受賞したことで有名な、インドの詩人 Rabindranath Tagore のこと。彼はカルカッタ郊外のシャンティニケタンという土地に学校をつくり、芸術教育を核とした独自の教育活動を展開した。ネルーの娘、インディラ・ガンディーもここで学んでいる。その学校は、今では幼稚園から大学までを備えた国立学校となっている。

ちなみに、タゴールと親交のあった岡倉天心も、タゴールに呼ばれてここで教鞭をとった。

January 12, 2007  

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