第6章(1)
朝の早い時間、私は夢にうなされていた。前の日の夕方、ツーリストロッジのレストランで食べたチキンカレーが悪かったに違いない。濃厚で油っぽいパンジャーブ風の料理が私は大嫌いなのだ。リサはむしろそれを好んで食べる。日本では、インド料理といえば、この種類しか食べられないのだ。
プリヨがカルカッタのチョウロンギー通りを裸で走っており、その後をビジネススーツを着た日本人のグループが、タクシーで追いかけているという夢を見た。突然シーンが変わり、範子がナッティアガルのステージで、キャサリンの父親と踊っているのを見た。奇妙なことに、私はそのステージのそでで学生服を着て漢字を練習しており、その間チットラディが、なぜ海外に住みたいかという理由を金切り声で私に話していた。
ラビンドラ・サンギート(タゴールが作った歌)がビートと混ざり合った音楽が聞こえ、そのビートに合わせ、目方のあるキャサリンの父親は首を突き出したり体を曲げたりしていた。そして私が無意識にラジオのスイッチに腕を伸ばしたので、今さっき椅子にリサが置いたマグカップをひっくり返した。
「夢で誰としゃべっていたの?」
蚊帳から出た時、リサが尋ねた。
「チットラディだと思うよ」
「嘘つかないで。漢字の書き順について何か言ってたから、ルパに違いないわ。だけど変な人ね、夢の中でさえ彼女と勉強しかしていないなんて。ロマンチックじゃないわねえ」
私は肩をすくめて浴室の方へ向かった。リサがルパのことをそんなに気にしないでくれたらと思う。
「日本人のグループが、カルカッタでプリヨ狩りをやっている夢を見たよ」
紅茶をすすりながら言った。
「面白いわ。あなたはもう彼が被害者だと思っているのね。範子は彼に大金を使っているの。それ知ってる?」
「洋服や何かを買って?」
「プレゼントだけじゃなくて、旅行やホテルの宿泊など全部よ。彼にはほとんど持ち金がないの」
「ホテルなんかどうやっているんだい。インドでは結婚していない男と女は、一つ部屋に簡単には泊まれないよ」
「そうなの、範子はそのことを言っていたわ。プリーではそれで困ったって。結局そのときは、別々の部屋をとらなければならなかったようだわ。範子を知ってるでしょ、1パイサでも余分にお金を使わなければならないとしたら、あの子くやしくて何週間も眠れないのよ」
「彼女、君から金を借りたいのか?」
「そうじゃないと思うわ。日本人は友達からあまりお金を借りないの。少なくともインド人がするように気軽にはね」
「だけど彼女たちは交際相手の旅費を払うのは嫌がらない、ベッドでの彼のサービスが満足いくものならね」
「何が言いたいの?」
「何も。ただ僕が売春宿を訪問するのと、範子がしていることは、大した違いがないということ以外はね」
「あなたは範子にフィアンセがいることを忘れている。セックスは彼女がほしい時、いつでも出来たのよ」
「東京のその男は女の喜ばせ方を知らないのかもしれない」
「そして、まだ母親のパッルー(※サリーの端。背中に垂らす部分)で顔を拭いている20才のベルガル坊やはそれを知っていると言うの?」
「かもしれない。それとも、範子が教えているのかもしれない。誰かに手ほどきするのは、実に面白いことだろうからね」
「なんていやらしい考え方。範子がプリヨと一番楽しんでいること何か知っている? 例えば、バスの屋根に乗って移動したりすること。バスがスピードを上げて、でこぼこ道をとばす時、彼女はものすごく興奮する。そういうのが日本では絶対望むことが出来なかった何かなのよ。彼女は新しい自由を見つけたの、信じてよ」
私は納得しなかったし、夢のことも面白くなかったので、ラームじいさんを訪ねることにした。
プリヨがカルカッタのチョウロンギー通りを裸で走っており、その後をビジネススーツを着た日本人のグループが、タクシーで追いかけているという夢を見た。突然シーンが変わり、範子がナッティアガルのステージで、キャサリンの父親と踊っているのを見た。奇妙なことに、私はそのステージのそでで学生服を着て漢字を練習しており、その間チットラディが、なぜ海外に住みたいかという理由を金切り声で私に話していた。
ラビンドラ・サンギート(タゴールが作った歌)がビートと混ざり合った音楽が聞こえ、そのビートに合わせ、目方のあるキャサリンの父親は首を突き出したり体を曲げたりしていた。そして私が無意識にラジオのスイッチに腕を伸ばしたので、今さっき椅子にリサが置いたマグカップをひっくり返した。
「夢で誰としゃべっていたの?」
蚊帳から出た時、リサが尋ねた。
「チットラディだと思うよ」
「嘘つかないで。漢字の書き順について何か言ってたから、ルパに違いないわ。だけど変な人ね、夢の中でさえ彼女と勉強しかしていないなんて。ロマンチックじゃないわねえ」
私は肩をすくめて浴室の方へ向かった。リサがルパのことをそんなに気にしないでくれたらと思う。
「日本人のグループが、カルカッタでプリヨ狩りをやっている夢を見たよ」
紅茶をすすりながら言った。
「面白いわ。あなたはもう彼が被害者だと思っているのね。範子は彼に大金を使っているの。それ知ってる?」
「洋服や何かを買って?」
「プレゼントだけじゃなくて、旅行やホテルの宿泊など全部よ。彼にはほとんど持ち金がないの」
「ホテルなんかどうやっているんだい。インドでは結婚していない男と女は、一つ部屋に簡単には泊まれないよ」
「そうなの、範子はそのことを言っていたわ。プリーではそれで困ったって。結局そのときは、別々の部屋をとらなければならなかったようだわ。範子を知ってるでしょ、1パイサでも余分にお金を使わなければならないとしたら、あの子くやしくて何週間も眠れないのよ」
「彼女、君から金を借りたいのか?」
「そうじゃないと思うわ。日本人は友達からあまりお金を借りないの。少なくともインド人がするように気軽にはね」
「だけど彼女たちは交際相手の旅費を払うのは嫌がらない、ベッドでの彼のサービスが満足いくものならね」
「何が言いたいの?」
「何も。ただ僕が売春宿を訪問するのと、範子がしていることは、大した違いがないということ以外はね」
「あなたは範子にフィアンセがいることを忘れている。セックスは彼女がほしい時、いつでも出来たのよ」
「東京のその男は女の喜ばせ方を知らないのかもしれない」
「そして、まだ母親のパッルー(※サリーの端。背中に垂らす部分)で顔を拭いている20才のベルガル坊やはそれを知っていると言うの?」
「かもしれない。それとも、範子が教えているのかもしれない。誰かに手ほどきするのは、実に面白いことだろうからね」
「なんていやらしい考え方。範子がプリヨと一番楽しんでいること何か知っている? 例えば、バスの屋根に乗って移動したりすること。バスがスピードを上げて、でこぼこ道をとばす時、彼女はものすごく興奮する。そういうのが日本では絶対望むことが出来なかった何かなのよ。彼女は新しい自由を見つけたの、信じてよ」
私は納得しなかったし、夢のことも面白くなかったので、ラームじいさんを訪ねることにした。
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