Thinking Women

Written by Shashank Lele in 1994-5 Translated by Yoshida Mitsuko

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Location: 京都市, 京都府, Japan

February 21, 2007

第4章(2)

美しいマンゴーの木立へと続く東の入り口近くで騒音がしたので、皆が振り返った。予期せずして、人力車が入って来た。ほろの上に拡声器が備え付けてあり、中に座っている人は手にマイクを持っていた。年がら年中、何やかんやに抗議しているベンガルでは特別な光景ではないが、シャンティニケタンでは確かに、珍しかった。

「消え失せろIMF。消え失せろIMF。国をアメリカに売らせるな。目覚めろ。目覚めろ。消え失せろIMF」

人力車は入って来て、展示会場の中心部に向かって来た。一時会話が途切れ、露店で展示物に見入っていた人たちは何ごとかと振り返った。人力車に座っている青年が見えた。チョクロバロティとか何とかいう英語科の学生らしかった。スンヌが私に語っていたところでは、この学生は風呂に入らない記録のようなものを作ろうとしていた。今学期に入って、まだシャワーの蛇口を回していないとスンヌは言っていた。

「何を言っているの? IMFって何?」とリサが尋ねてきた。

「世界銀行を知っているだろう。IMFはその兄弟だよ」

「ああ、国際通貨基金のことなの」

「そうだよ、よく知ってるじゃないか」

「だけどそれがどうしたの? 何故IMFが好きでないの? その基金はカルカッタの飲料水の質を改良するために、お金を出しているんでしょう。今朝の新聞で見たわ」

シャンティニケタンの催し物会場では、警察の配備とかガードマンなどは一般に必要としないから、そんな人は誰もいなかった。だから、しばらくの間は、IMFもUSAも好かないこの男の取り扱いに手をこまねいていたが、やがて年長の女教授が進み出て、学生と人力車夫を叱り、展示会場の外へと戻した。

「こんな問題が起こるのも、学校側が催し物はすべて戸外でという魅力にとらわれているからさ。何故講堂で美術展示会を開く事が出来ないのかね? たくさんのホールがあるというのに」

数歩離れた所で誰かがいきまいていた。

「しかし、グルデブ(※タゴールのこと)は何をするにも開けた場所でしたがった。それがここ、ヴィシュヴァ・バーラティの伝統なんだ」

とおずおずとした男の声。

「それは、その伝統だけしか今覚えていないからさ。グルデブが今、毎夕7時以後、フットボール場の近くで何が起こっているか知ったら、あまりの恥ずかしさに死んでしまうだろう」

リサを出口の方へと促した。電話をかけに行かなければならなかったのである。

シャンティニケタンで長距離電話が出来る所は2ケ所しかなかった。ボルプールの電話局と運河の向こうの大きなホテルである。ホテルの奴らは正真正銘の詐欺師で、法外の料金をふっかける上に通話時間まで誤算するのだ。しかしながら、夕方このホテルへ人力車で行き来するのは、ここで味わえる最も素晴らしいことの一つだと言える。だから貧乏といえども、リサと私は概してこっちの方をとる。

「ジボンとカコリや、私達の知っている彼らのようなカップルのことをよく考えるんだけど、あの子たちって、シャンティニケタンを去ったあと結婚して、一緒に住むと思う?」

とリサが尋ねた。

「一度か二度、ここの人達に質問したことがあるけど、答はまちまちだね。スブロトダー教授が言うには、この<幼稚園>を出た後は100組のうち1組も残らないということだ」

「本当!?」

「うん、でもアミット ロイが言うには、君は彼のこと知らないと思うけど、50%ぐらいが成功するそうだ」

「ほんと、インドの統計って信用できないのね」

「わかってる、これは全く個人的なことだからね」

「だけどここは随分違うわね。インドでは男と女は結婚まで全く別々の世界に住んでいる、とあなた言ったでしょう。そして結婚後も男は男、女は女で別々に交流し続けるって」

「自分が言ったことに異言はないよ。ベンガルは確かにインドの他の地域と違うし、中でもシャンティニケタンはもっと違っている。自分のことをいえば、25才になって生涯初めてのキスをしたけれど、相手は売春婦だった」

リサは淑女ぶる女ではない。26才にしかならないのに、私と出会う前に複数の男を知っていた。しかし、売春婦のことは気にさわった。どうして男が一度も会ったことのない女と肉体的に親密になれるのか、理解不可能だと言う。少なくとも、売春婦を尋ねたことに罪の意識を持つべきだという感じなのだ。もし売春夫がいるとしたら、ほとんどの女が一度ならず訪ねるだろうという私の議論は受け入れてもらえない。

リサは利口で、この美しい夕方を、性や道徳のことなど私達がいつも好んでする議論にのめりこむことで台無しにしたくなかった。蚊がうるさい時とか、停電の時とか、ほかに何もすることがない時、家でいつでもそんなことに耽ることが出来るのだから。リサは、鹿公園入り口の左側にある池にのぼってゆく霧を指さした。

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