Thinking Women

Written by Shashank Lele in 1994-5 Translated by Yoshida Mitsuko

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Location: 京都市, 京都府, Japan

June 04, 2007

第8章(1)

シャンティニケタンには新しい家が多すぎる。私は新しい家は好きではない。最新の建築や外装はまったく興味をそそらない。人が住み、料理し、洗濯し、愛し合い、そして子供ができて、喧嘩をし、病んで死ぬと、家は美しく見え始める。新しい家は、ショーウインドーに吊るされているドレスのようなものだ。少なくとも私には、誰かがそれを着てみるまで、どんなに良い服なのか決して分からない。

こうしたシャンティニケタンの新しい家々はいつも閉め切られている。持ち主たちはクリスマス休暇になるとカルカッタからやって来るのだとアショクが言った。

一人の老人が、私達の住んでいる小道にある新しい家の建設を監督している。日に何度も、その建築現場を通るので、よく挨拶や冗談を交わす。

「シャンティニケタンは嫌いだ。地上でいちばん退屈な場所だ」

ある日、この男は愚痴をこぼした。

「ひどいもんだ。こんな穴にいては質のまともなパンさえ手に入らない」

と言った。

おもしろい。何ケ月も過ごしている間、少なくとも日に10回以上は、シャンティニケタンがどれほど素晴らしいか、ということをいやでも耳にしなければならなかったが、誰かがひどい所だと思っているのを知って気分が新たになった。

パンのことでは、全く同感である。

「パンだけじゃない、この場所に一体何があるんだ? 新聞は昼食時まで来ないし、まともなレストランだってほとんどない。皆どうやって生活しているのか想像できん。それに、日中ほとんど道に人気がない」

言いたいことは分かる。ここ、アンドリゥースパリは、大学の建物のガヤガヤから少し離れてかなり静かである。

彼はカルカッタ出身の退職した鉄道員だった。カリフォルニアの大学で教授をしている彼の娘が、私達の小道のこの見苦しい構造物の注文主だった。彼女は年の始めにやって来て、この計画を彼に託したのである。かわいそうな老父はセメントを買い、怠けることと不正直なことにかけては世界中で苦もなく一番になれるであろうこの労働者達を監視するという厄介に直面させられている。

「家内はそんなことに興味を持っておったな」

私がラビンドラ サンギート(タゴール・ソング)に興味があるかどうか尋ねた時言った。

「わしは仕事というものを信じる。38年鉄道に奉公して、いいかね、だんな、たった一日の病欠もないんだ。ここの人達は働きたくない。だけど誰かが働かなくてはならんだろう? 誰かが水を供給しなければならないし、発電所を動かさなければならない。そうであって初めてここの人達が一日中歌ったり、踊ったり、絵を描いたりできるんだ」

「サンタル族の人たちは、池から自分達の水をとり、電気も必要ないようですよ」

不本意ながら言った。

「それならサンタル族のように住みなされ。それに異議はない。私の娘は、この家を『サンニャース(捨離)』と呼びたいそうだ。サフランっぽい色(出家を象徴するオレンジ色)で塗るように頼んできた。いいかね、だんな、100万ルピーも使って家を建て、それを『捨離』と名付けたいんだよ」

「恐らく彼女はここに住みに来る時、アメリカを捨てるという意味なんでしょう」

「すべて無意味だ。アメリカに行った者は誰も帰って来たことがない。皆帰ってきたいんだが、永遠に延ばし続けるんだ」

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