第8章(2)
リサは、今朝、範子から手紙を受け取った。範子は2週間前日本に帰り、私達みんなが首を長くして彼女からの近況報告を待っていたのだ。範子のことでは意見が完全に真っ二つに分かれた。半分は、範子が大阪国際空港で飛行機から降りて2分と経たないうちに、プリヨもシャンティニケタンも忘れてしまうだろうと主張し、残りの半分は、この可愛らしいカップルが結婚して残りの人生を幸福に暮らすのは必至だと信じていた。
手紙は少し期待外れだった。日本に着いたあとすぐ、1月20日の結婚式の予定をキャンセルすると家族に宣言した、と範子は書いた。手紙には、この宣言に対しての父の反応、そして母の反応、そして姉の反応、そして兄の反応について長々と記述されていた。これらの反応は皆が予期していたことなので、その部分を飛ばして、先を読むようにリサに言った。一番興味ある反応は、この手紙を範子が書くほんの1日前に受け取ったばかりだという東京のサラリーマンのそれであった。
手紙によると、範子が結婚をキャンセルしたいと知ってから、この男は彼女の両親に電話で次のように言ったらしい。「少し考える時間をあげてください。混乱してストレスがあるようです。1月20日の式はキャンセルして、彼女が回復するまで待ちましょう」
それで、範子は再びジレンマに陥ったと書いてあった。それほど寛大で成熟した男を見捨てることも出来ないし、かといって、あれほど愛したプリヨを忘れることも出来ない。人生は地獄だと書いた。身近にいる者達をとひどく苦しめたことで自己嫌悪に陥った、自殺という考えが、今現在、彼女の心を離れないでいると書いてあった。
「範子は文才があるわ。彼女がこんなに上手に書けるなんて思ってなかった」
最後の行を読み終えた後、リサが批評した。
「愛は凡人をも作家にすることが出来る」
とスンヌが言った。
「けど、公に結婚を取り消したいと言った後で、またどうやってその男と結婚することが考えられるんだ?」
スサントは首をかしげた。
「それにその男は、彼女がインドでしたことを知った後で、どうやって結婚したいと思えるんだ?」
「彼女、プリヨのことは、誰にも言っていないの。ただ結婚したくないと言っているだけなの。それで家族が理解に苦しんでいるのよ」
リサは説明を加えた。
「その部分、読まなかったよ」
「日本語から英語に訳すのは時間がかかるの。みんなすごく急いでいるんだもの」
「だけど、今彼女にはいついつまでにこれを決めなきゃならないっていう期限はなくなったのね。そんな状況で何か決断するっていうのは、とても難しいことよ」
私は規子ジュニアに感心する。英語のアクセントはひどいものだが、頭は明晰だ。
「しかし、東京の男の身にもなってみろよ。そんなショックに耐えるのは簡単なことじゃない。彼に同情せずにはいられないよ」
スサントは感じやすい。
「範子のような女たちは人にショックを与えるだけさ、それが彼女らの運命なんだ」
私はきっとやってくるに違いないリサの反応を扇動するようにこう言った。
「あなたはこんな成りゆきの中で彼女自身、一生懸命我慢して、ストレスに耐えているってことが理解出来ないのよ」
「自業自得だろ」
「あなたにかかったら人生なんて単純なものなのね」
手紙は少し期待外れだった。日本に着いたあとすぐ、1月20日の結婚式の予定をキャンセルすると家族に宣言した、と範子は書いた。手紙には、この宣言に対しての父の反応、そして母の反応、そして姉の反応、そして兄の反応について長々と記述されていた。これらの反応は皆が予期していたことなので、その部分を飛ばして、先を読むようにリサに言った。一番興味ある反応は、この手紙を範子が書くほんの1日前に受け取ったばかりだという東京のサラリーマンのそれであった。
手紙によると、範子が結婚をキャンセルしたいと知ってから、この男は彼女の両親に電話で次のように言ったらしい。「少し考える時間をあげてください。混乱してストレスがあるようです。1月20日の式はキャンセルして、彼女が回復するまで待ちましょう」
それで、範子は再びジレンマに陥ったと書いてあった。それほど寛大で成熟した男を見捨てることも出来ないし、かといって、あれほど愛したプリヨを忘れることも出来ない。人生は地獄だと書いた。身近にいる者達をとひどく苦しめたことで自己嫌悪に陥った、自殺という考えが、今現在、彼女の心を離れないでいると書いてあった。
「範子は文才があるわ。彼女がこんなに上手に書けるなんて思ってなかった」
最後の行を読み終えた後、リサが批評した。
「愛は凡人をも作家にすることが出来る」
とスンヌが言った。
「けど、公に結婚を取り消したいと言った後で、またどうやってその男と結婚することが考えられるんだ?」
スサントは首をかしげた。
「それにその男は、彼女がインドでしたことを知った後で、どうやって結婚したいと思えるんだ?」
「彼女、プリヨのことは、誰にも言っていないの。ただ結婚したくないと言っているだけなの。それで家族が理解に苦しんでいるのよ」
リサは説明を加えた。
「その部分、読まなかったよ」
「日本語から英語に訳すのは時間がかかるの。みんなすごく急いでいるんだもの」
「だけど、今彼女にはいついつまでにこれを決めなきゃならないっていう期限はなくなったのね。そんな状況で何か決断するっていうのは、とても難しいことよ」
私は規子ジュニアに感心する。英語のアクセントはひどいものだが、頭は明晰だ。
「しかし、東京の男の身にもなってみろよ。そんなショックに耐えるのは簡単なことじゃない。彼に同情せずにはいられないよ」
スサントは感じやすい。
「範子のような女たちは人にショックを与えるだけさ、それが彼女らの運命なんだ」
私はきっとやってくるに違いないリサの反応を扇動するようにこう言った。
「あなたはこんな成りゆきの中で彼女自身、一生懸命我慢して、ストレスに耐えているってことが理解出来ないのよ」
「自業自得だろ」
「あなたにかかったら人生なんて単純なものなのね」
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