Thinking Women

Written by Shashank Lele in 1994-5 Translated by Yoshida Mitsuko

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Location: 京都市, 京都府, Japan

June 16, 2007

第9章(2)

事件後、私達は京都の外人ハウスに移った。暴力が私を怖じ気づかせ、麻痺させたが、貧乏だからというだけで、何も起こらなかったように振る舞い続けることは出来ない。

リサの父親は淋しい男である。誰のためにも尻を動かすことは出来ないが、皆に好いてもらいたい。ただ父親、あるいは夫だという理由だけで、あるいは単に男だという理由だけかもしれない。男は王であり、男は地球を所有する。男たちは淋しいのだ。

京都のこの外人ハウスには女性の管理人がいる。彼女は男のように振る舞いたがる。非常に奇妙だ。つまりなぜかというと、彼女は私が今までに出会った中で、恐らく最も美しい女と言ってもいいからである。彼女は、外人ハウスの同居人全員を少年犯罪者のように扱う。

私は彼女の誕生日にタバコを差し出した。それくらい自分で買えると彼女は即座に言った。夕方はそれほど機嫌が悪くないが、昼の12時より前は、外人ハウスで最も勇敢な人達でさえ、彼女の行く手を横切ろうとはしない。

どこにでも掲示がしてある。トイレの使い方について、朝の時間にVCRを使ってはいけないことについて、自転車の駐輪について、台所用品の洗い方について、すべてについて。 一度、トニーがオーストラリアにいるガールフレンドから、朝、長距離電話を受けた。即座に掲示が現れた。その夕方、電話器の上のカレンダーに、きちんと押しピンで留められたのだ。

   悪い使用者へ
   朝の11時より前には電話をかけないようあなたの友達に言いなさい。
   皆が迷惑します。この家の人達は夜遅くまで仕事します。
   誰も朝、邪魔されたくありません。

管理人は、掲示を書くのに大変忙しい。彼女の字は、日本人の誰もがそうであるように美しいが、英語は、やはり日本人の誰もがそうであるように上手くはない。彼女は、よく誰かへの腹立ちを部屋から部屋へ押しピンで留めてゆく。台所の台の上に洗ってないグラスが残されていたとか、誰もいない居間に扇風機がつけたままになっていたとかである。

彼女は淋しいのだ。それを知るために精神医学者になる必要はない。ジョンが、彼女は定期的に男に抱かれる必要がある、それだけさ、と言っていた。リサはそんなに単純なことじゃないと言った。しかしリサは、何を言ってよいのか分からない時はいつでも、よくこう言うのだ。

同じような何かが、リサの父親に必要である。だが、微笑みを、顔に唾を吐きつけて返すような男をいかに愛するのか。彼の場合はもう手遅れかもしれない。

範子は京都に住んでいる。偶然の一致である。リサは、範子が日本で私達のことを避けるだろうと言っていた。なぜなら、私達がシャンティニケタンで彼女がしたことの証人だったからである。リサは間違っていた。私達が神戸にいた時は会いに来たし、定期的に電話してきた。京都では、ほとんど毎日会った。シャンティニケタンでのように。

範子は淋しいのだ。結婚を取り消したことは、家族に永久の紛糾を巻き起こした。そして彼女にはほかに友達があるようには思えない。私とリサだけが個人的に話すことの出来る唯一の者なのだ。それに彼女は今たくさん話す必要がある。

日本での数ケ月間に、私はこれまでの人生で出会ったよりも多くの淋しい人間達に出会った。

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