第12章(1)
国家主義というものは独特である。誰かがでたらめに大海に投げたような数個の石の上に事実上住む日本人は、この特異性にかなり悩む。彼らは実存主義を学び、ヴェーダを学ぶ。本を集める。家に本がたくさんありすぎて、他の物を置く場所がほとんどない。日本の商店街には4軒毎に本屋があり、本は10段もの棚に積み上げられている。フランス語から翻訳された本、ドイツ語から翻訳された本、英語から、ヘブライ語から。しかし、彼らは、太平洋の細長いこの島の外で生まれた者が人間であり得るとはあまり思っていない。
ずっと以前、彼らは中国から文字、料理、宗教、鼻の低さなどを手に入れた。しかし、数十年前、彼らの生活水準が上昇した時、中国人を見下し始めた。彼らは目を西洋に向けた。あるいは、西洋人がそう仕向けたのかもしれない。彼らはそういうことに長けている。
彼らの生活水準は、それ以来さらに上がり、今彼らはどこを見ていいのか分からない。
西洋は今も重要だが、広島に原爆が落とされた時ほど特別ではなくなった。
日本で最も人気のある気晴らしは、自責である。戦争でしたことへの自責。経済的なゴール以外何も追求出来ないことへの自責。封建的振る舞いに対する自責。自責、自責そして自責。しかし、この自責の念にかられ、それにふけることは彼らの実際の行動に何の変化ももたらさない。実に独特である。
数ケ月の冬眠の後、範子は再び動き始めた。先日やって来て、過去6年間、東京で不法就労しているバングラデシュ出身の男の子について話した。
リサは火曜日と木曜日、神戸でアルバイトをしている。どういうわけか、範子はいつもこの時に暇なのだ。リサに対して何らかの後ろめたさを感じ始めたようである。私は外国人だ。私と一緒に時間を過ごすのは、海外にいるようなものである。
範子はセックスについて話すのが好きである。問題なのは、私もそれについて話すことが好きだということだ。話の大半は面白くない。範子は未だ好奇心の域を出ていない。しかし、女と一緒にこういうことを話すというのは刺激的である。
「こういう話はリサ子さんとすれば? 彼女の方が君のことをもっと助けてあげられると思うけどね」
範子に一度尋ねたことがある。
「リサ子さんは日本に来てから変わったの。インドでは、特に彼女があなたに会う前は、よくこういうことについて討論したものだったわ」
英語でなら、セックスについて話すのも、範子にとって抵抗が少ないようなのだ。しかし、彼女の英語の知識はごく限られているので、話はなかなか前に進まない。
このジャハンギールという男の子は、何年も前から範子に恋しているらしい。ずっと東京から電話をかけてきている。奇妙なのは、ここ数ケ月の間に、範子の話の中に一度も彼のことが出てこなかったということだ。
「知り合ってかなりになるわ。でも私に恋しているって知ったのは、ほんの最近なの」
「どうやって?」
「どうやって? どういう意味? ワカラナイ」
「彼がこの数年間ずっと君に恋をしているって、どんなふうにして知ったの?」
「彼が電話でそう言ったの。彼もうお金を十分貯めたから。今、ダッカに戻りたがってる。私が決心するのをただひたすら待っているのよ。ジャハンギールは、1年、2年、あるいは10年でも待てるっていうのよ」
「ふーん、だけど君の両親は?」
「そうなの、そうなの。両親は絶対に外国人を受け入れてくれないわ。ムズカシイデスネ!」
じゃあどうしてプリヨでは駄目だったのかとかいうような質問は範子には無意味だ。そんな質問を避ける準備をして来ている。ただ同情してくれる聴衆が必要なだけなのだ。家では彼女に反対を唱える人ばかりなのだろう。
「だけど、私はジャハンギールを愛してないわ。ただ、友達と思っているだけよ。良い友達とね」
こんなセリフはもうたくさんだ。前にインドで、プリヨについても同じことを聞かされた。
「ジャハンギールにあなたたちのこと詳しく話してるわ。彼、あなたに会いに京都に来たいのよ」
リサはこのジャハンギールに関する話を好まなかった。
「彼女を勇気づけないでよ。一緒に寝る男が欲しいだけなんだから」
と言った。
「こんな愛がどうのこうのっていう話なんかもう飽き飽き。彼女、その意味が分かってるの?」
リサは実際、シャンティニケタン時代からかなり変化した。
ずっと以前、彼らは中国から文字、料理、宗教、鼻の低さなどを手に入れた。しかし、数十年前、彼らの生活水準が上昇した時、中国人を見下し始めた。彼らは目を西洋に向けた。あるいは、西洋人がそう仕向けたのかもしれない。彼らはそういうことに長けている。
彼らの生活水準は、それ以来さらに上がり、今彼らはどこを見ていいのか分からない。
西洋は今も重要だが、広島に原爆が落とされた時ほど特別ではなくなった。
日本で最も人気のある気晴らしは、自責である。戦争でしたことへの自責。経済的なゴール以外何も追求出来ないことへの自責。封建的振る舞いに対する自責。自責、自責そして自責。しかし、この自責の念にかられ、それにふけることは彼らの実際の行動に何の変化ももたらさない。実に独特である。
数ケ月の冬眠の後、範子は再び動き始めた。先日やって来て、過去6年間、東京で不法就労しているバングラデシュ出身の男の子について話した。
リサは火曜日と木曜日、神戸でアルバイトをしている。どういうわけか、範子はいつもこの時に暇なのだ。リサに対して何らかの後ろめたさを感じ始めたようである。私は外国人だ。私と一緒に時間を過ごすのは、海外にいるようなものである。
範子はセックスについて話すのが好きである。問題なのは、私もそれについて話すことが好きだということだ。話の大半は面白くない。範子は未だ好奇心の域を出ていない。しかし、女と一緒にこういうことを話すというのは刺激的である。
「こういう話はリサ子さんとすれば? 彼女の方が君のことをもっと助けてあげられると思うけどね」
範子に一度尋ねたことがある。
「リサ子さんは日本に来てから変わったの。インドでは、特に彼女があなたに会う前は、よくこういうことについて討論したものだったわ」
英語でなら、セックスについて話すのも、範子にとって抵抗が少ないようなのだ。しかし、彼女の英語の知識はごく限られているので、話はなかなか前に進まない。
このジャハンギールという男の子は、何年も前から範子に恋しているらしい。ずっと東京から電話をかけてきている。奇妙なのは、ここ数ケ月の間に、範子の話の中に一度も彼のことが出てこなかったということだ。
「知り合ってかなりになるわ。でも私に恋しているって知ったのは、ほんの最近なの」
「どうやって?」
「どうやって? どういう意味? ワカラナイ」
「彼がこの数年間ずっと君に恋をしているって、どんなふうにして知ったの?」
「彼が電話でそう言ったの。彼もうお金を十分貯めたから。今、ダッカに戻りたがってる。私が決心するのをただひたすら待っているのよ。ジャハンギールは、1年、2年、あるいは10年でも待てるっていうのよ」
「ふーん、だけど君の両親は?」
「そうなの、そうなの。両親は絶対に外国人を受け入れてくれないわ。ムズカシイデスネ!」
じゃあどうしてプリヨでは駄目だったのかとかいうような質問は範子には無意味だ。そんな質問を避ける準備をして来ている。ただ同情してくれる聴衆が必要なだけなのだ。家では彼女に反対を唱える人ばかりなのだろう。
「だけど、私はジャハンギールを愛してないわ。ただ、友達と思っているだけよ。良い友達とね」
こんなセリフはもうたくさんだ。前にインドで、プリヨについても同じことを聞かされた。
「ジャハンギールにあなたたちのこと詳しく話してるわ。彼、あなたに会いに京都に来たいのよ」
リサはこのジャハンギールに関する話を好まなかった。
「彼女を勇気づけないでよ。一緒に寝る男が欲しいだけなんだから」
と言った。
「こんな愛がどうのこうのっていう話なんかもう飽き飽き。彼女、その意味が分かってるの?」
リサは実際、シャンティニケタン時代からかなり変化した。
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